・これは夢小説？名前変換小説？です
・変換機能はないのです
・よって藍色主：藍川セツ表記です
・時期は葬神シリーズ二期になります
・マスター喪失後の放浪期
・成敗戦争のゼロの方になります
・続くかは未定

事故ですね？



主君亡き後、ふらりふらりと宛の無い旅をしている。
藍色の髪に藍色の瞳。
柔和で人好きそうな笑顔は性差を感じさせない。
そう、そんな青年の物語。
青年の名は藍川セツ。
唯一を喪った永遠の旅人。






彼が、その世界に来て欲しいと乞われたのは、セツの友人＿＿＿九尾の狐・九王（クオウ）の眷属の一匹だった。
曰く、眷属の尾割り狐・トウコの守護地の汚れが酷く、使える神にも接触が取れずじまいで、自身の力を持ってしても境内と宮司の親族と境内周辺の浄化ぐらいしかできていない。
これは決してトウコが悪いのでなく、浄化していく先から汚れが流れ込み、鼬ごっこになっているからだ。
随分と毛艶が無くなった姿は疲れているように見受けられた。

（急ぎのものは何もない、ですね）

セツは事情を聞きながら、自身の不可避の予定を思い返す。
人間社会にどっぷりと浸かる様な立場なりを今有しておらず、また主君を看取った後彼の血族から使えても良いと思う人材も排出されていない。
簡単に言えば、暇だった。

「解りました。その依頼を引き受けましょう」




＊　＊　＊


界を渡る。
空間を駆ける。
トウコを道筋に辿りついた先。

『ここが妾が守護場じゃ』
「稲荷神社ですか……良い場所ですね」

神社は高台に位置し、鳥居の先から豊かに発展していったであろう街の灯が覗く。
周りの発展に反し、境内の中には大きな御神木の枝葉が風に揺れた。
聖域であるが故の清涼な風がセツの頬をなぞる。
ピリッとした、静電気のような痛みがセツの掌に走ったと思ったら、紅い痣が浮かぶ。
円に十字を作った一辺が刺さっているような奇妙な形だ。

『どうなされた』
「そうですね……何かを呼び出す術式でしょうか？」
『？』

不思議そうに見返すトウコの頭を梳く。
気持ち良さそうに目を細めるのを横目に手に浮かぶ痣を解析していく。
ラインが痣から出て何処かへと繋がっている。
またセツの内部魔力がラインを通り、微量ながら流れていくのも確認が取れた。
おもむろにそこらに落ちていた枝を手に取り、正円を地面に描いた。

「……『来い』」

魔力を載せて言の葉は言霊となり、ラインを引っ張る。
か細く繋がっていた線は言霊のあと、術者の魔力を多量に奪った。
魔力の一部は先ほど描いた円を光らせ、呼び寄せる者の土台となる。
円の内に文字はない。
なくても、問題がない。
なぜなら術式事体が本人であるからだ。
光で視界が完全に奪われた頃、無理矢理の召還に応える者がいた。
ラインに導かれた＿＿＿と言えば聞こえが良いが、半強制的な強引な召還となった。
虚空からセツ達の目の前に現れた＿＿＿もとい、ダイナミックおじゃましますた☆をした人物が土煙と共に視界に入る。
紅い紅い、男だ。
白い髪は後に流され、隆々たる肉体は戦う為のしなやか筋肉をつけている。
肌はやや薄い褐色が南米の肌を思い出させるが、顔はアジア系の堀の緩やかさを有していた。
灰白色の瞳は強い意志を宿し、セツを射抜く。

「君がマスターかね？」
「貴方を召還した者という意味では、そうですね」

土埃を祓いながら、男はセツを見遣る。
セツは内心、呼び出された者が”人”で在る事に驚きつつも、柔らかな笑みを浮かべたままだ。

「こんな乱暴に召還されるとは……」
「それはすみません」
『狭間の方が謝る事では＿＿＿』
「え？アーチャー？って……藍川セツ！！！？？？」

皮肉な笑みの嫌みをさらりと流しながら、不快を感じさせない程度に観察を重ねて行く。
それもつかの間、新たな乱入者が、彼らの名を呼んだ。
セツは一瞬不可解な出来事に眉を寄せるも、直ぐに良い笑顔を浮かべる。
それはもう、薄ら寒くなるよな笑顔だった。

「……色々貴方と話す前に、彼に色々しゃべってもらいましょう」
「……先に憂いを晴らすべきだな」

乱入者はひぃ！と、その迫力に腰を抜かし、二人を見上げる形となる。
乱入者＿＿＿少年の年の頃は十代後半。
学生服と身長と声から察するに、高校生あたりだろう。
日本人らしい髪色とやや整った顔立ちをしている。

『狭間の方、ソレはこのが神社の連なる者。それ故に危害を加えるのは止めて頂きたい』
「大丈夫ですよ。話を聴くだけです」
「あぁ、ちゃきちゃき吐いてもらうとしよう」
『では、場所を移すかのぅ』

尾割り狐の先導に従って、三人は移動した。
恐喝された少年から詳細を聴くまで、後十一分。