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日々徒然?になる予定
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運命 バサ雁
*クズスロットさんです



紫紺のような緩やかなウェーブを描く髪を軽く後に結んだ美丈夫が肉感溢れる美女を連れてラブホテルに入って行くのをやや遠目から目撃した時だった。


___あぁ、もう無理だな


そう思ったのは。
もう誤摩化すのに疲れた俺は、唇を噛み締めて足早にそこから離れた。
ただただ早く一人になりたくて仕方がなかった。





ダリアの花束を投げ捨てる





俺こと間桐雁夜はとある大学の三年をしている。
親と大喧嘩の果てに家を出て、何とかバイトの掛け持ちで食費なり学費なりを賄っている。
まぁ、所謂苦学生ってヤツだ。
学生生活のほとんどをアルバイトやサークルに費やしているけれど、悪くはないと思う。
……彼女とか夢のまた夢の状態だけど。
初恋の葵さんがいけ好かないあの野郎と婚約してから、新しく誰かを好きになったことがなかった。
そう、あいつに出逢うまでは。
あいつ___一応俺の恋人になるのだろう___ことランスロットはイギリスから来た留学生で、俺と同年で同じ学部だ。
そこそこ語学ができた俺は、あまり日本語に慣れていないランスロットとも早くに交流があった。
あまり口数の多いタイプではないが、紳士的で一緒にいて中々に心地よかった。
顔良し、性格よし、頭良しの、ハイスペックイケメンだった。
どんなヤツにも欠点というのを神様とやらは与えるらしい。


ランスロットは女癖がたいそう悪かったのだ。


日本語にやや不自由な時ですら二股をし、ハイスッペクな頭脳で語学をマスターした頃には入れ食い状態。
噂なんかで聞いた話によると、六股とか十股とか……。
これがランスロットでなかったら、妄想乙の一言で終わっていただろうが、抱かれるだけどもいい!!と騒いでいる女の子が後を絶たない美形だった。
少女漫画か!と突っ込みたくなるくらいのフェミニストが、顔と相まって御伽噺の皇子様のように映るらしい。
本人曰く、『女性を大切にすることは当然です』と女性の頼みは何一つ断らない。
抱いて欲しいと乞われれば簡単に抱く。
優しい言葉を掛け、望み通りセックスは致しても、キスすることはない、なんて話もあったようなきがする。
あぁ、話が逸れたな。
来るもの拒まず、去る者追わずのスタンスらしく、それを理解して賢く振る舞う女性と縋り嫉妬する女性とに概ね別れる。
特に後者の女性達と修羅場を形成したのも一つ二つではない。
それでも友好を続けていたのは、なんだかんだランスロットが好きだったからだ。
友愛なんかじゃない、恋情としてだ。
どうして好きになったのかは解らない。
気付いたら、好きだった。
心臓はいつもよりドキドキするし、アイツのクサい言い回しに思わず視線そらしちゃうし。
自覚した時は勘違いだと思った。
意識するのが嫌で避けた事もある。
それでも、勝手にそれは俺の胸の内に育ち、誤摩化せなくなった。
で。
ある日、ランスロットと一緒に飲み会に誘われて、呑みにいった。
珍しくバイトもなかったし、いつも断ってばっかりだからな……と思い至り参加したのだ。
これが間違いだった、と今ならはっきり言える。
しこたま酒を呑まされてベロンベロンになった俺はランスロットにお持ち帰りされて___喰われたのだ。
アッーーーーー!!!
酒に酔っても記憶が飛ばない俺は……orz
朝起きて大混乱中の俺にアイツは告白してきた。
『好きです____愛しています』
そしてあまやかに口付けを落として来る。
その言葉に俺は応えた。
物語だったら、これでおしまい。
ハッピーエンド。
でもさ、現実だから必ず明日が来る。
晴れて恋人同士になっても、アイツの女遊びは終わらなかった。
誘われれば他の人を抱くし、俺とアイツと過ごす二人だけの時間の殆どがセックスになっただけ。
正直言えば、前の方が良かった。
くだらない話して、課題を手伝ってもらったりしたあの頃。
恋人という肩書きを得てから、遠くなったと俺は思う。
幸せじゃなかった。
前と変わらずに、誰かを抱くランスロットと一緒にいることも。
恋人なんて名ばかりだと気付いてていても、手放せない俺自身も。
そして何より、どろどろの嫉妬で身を焦がす事も。
大嫌いだ。
それでも誤摩化して見ないふりして忘れたふりをしてみたけど、もう無理だ。
もう、無理だよ。
一緒にいるだけで幸せになんてなれないよ。
辛い。
辛いんだ。
どうしようもない程、辛いんだ。

だから俺は____。





休日。
いつものように誘われて、俺はランスロットの居間にいた。
たいして意味のない情報を排出しているテレビの音声を聞き流す。
窓からの陽射しで部屋は明るい。
ランスロットの視線はテレビの映像に釘付けだ。

「なぁ、ランス」
「んー、なんですか?」
「別れよう」

うららかな午後。
俺は日常の延長線のように別れを告げた。
奇妙なまでの居心地の悪い沈黙が落ちる。
画面の向こう側でわっと笑い声が響き、より室内を寒々しく彩る。

「雁夜……?」
「もう、ランスロットとは付き合えない」
「雁夜、どういう……」
「おまえと一緒にいるのが、疲れたんだ。それに___」

おまえ、別に俺の事好きでも何でもないんだろ?と、唇から零れた。
何人何十人と愛を囁くランスロットにとって挨拶でしかないことを思い知らされた。
自分の性欲が果たされるなばどうでもいいんだろう。
全てがリップサービス。
つまりは嘘。
まぁ、それもそのはずだ。
容姿十人並みで、特徴のない性格。
何でも持っているランスロットが俺の何を惹かれたというのだろう。
考えればすぐに解ることだけど、俺は目を逸らした。
まやかしでも良いから愛されたかった。
虚しいだけだった。
だからもう、いらない。

「じゃ」
「え___」

俺は振り返らない。
ランスロットの部屋を出て、さようなら。
明後日には日本にいない俺にはもうランスロットの感情なんて関係ない。
無理矢理にねじ込んだ海外留学で行き先はアメリカ。
環境が変われば忘れられるだろう。

「うん、愛していたよランス」

小さくそう囁いた。




おわり



あとがき
ダリアの花言葉>「移り気」「華麗」「優雅」「威厳」「不安定」
ランスロットのイメージに合いすぎたんで、これにしました()
元の鞘に戻るか否かはこのあとのランスの働きしだいでしょうけど



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